カテゴリー「現代音楽」の12件の記事

2020.05.02

世界で初めて電子音楽を作曲した「シュトックハウゼン」

現代音楽に多くの足跡を残した作曲家「シュトックハウゼン」

来日コンサートで演奏されたときの姿を一度だけ拝見したことがありますが、際立つ存在感だったのを記憶しています。

3つのオーケストラのための曲「グルッペン」、世界中の国歌を取り入れた「ヒュムネン」などインパクトの強い曲が多いですが、世界初の電子音楽を作曲したのも彼です。一番最初の電子音楽は「習作1」<1953>ですが、その後作られた「習作2」<1954>は楽譜が出版されています。

実際楽譜と曲が連動したYoutubeを見ると、どのような曲でどんな楽譜になっているのか理解しやすいです。

習作2(Youtube)

上の四角形が周波数(正弦波の混合)と音の持続時間、下が各々の音の大きさの変化を表します。

当時はテープを使って切ったり張り合わせしたりして音を作り出していたそうです。

CDを買うと、詳細な解説がありますが、これは日本語に訳されて公開されています。詳細を知りたい方は、

シュトックハウゼン音楽情報 シュトックハウゼン全集・ライナーノート:CD3 習作II <1954>

をご覧ください。

 

シュトックハウゼンの電子音楽を使った音楽は、少年の声と電子音楽を融合した作品「少年の歌」(具体音楽と電子音楽の初めての融合作品)、生の楽器の演奏と同時に電子音楽を鳴らす「コンタクテ」(人の演奏と電子音楽の初めての融合作品)が歴史的に評価が高いです。

 

シュトックハウゼンなど現代音楽の歴史を学びたいときには、「現代音楽小史」がお勧めです。

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2015.02.08

現代音楽入門その1-印象派音楽の出現

現代音楽入門WEBサイト「20世紀音楽の世界~現代音楽って何?~」ですが、作成してから時間が経ちましたので、補筆したものを当blogで紹介します。

■現代音楽とは?

最近,クラシックの演奏家やBGMでも20世紀の音楽 を取り上げる機会が多くなっています。 その反面,20世紀の音楽の情報は不足していて

「現代音楽って聞いていて難しい音楽のことでしょう?ちょっと聞くのをためらうよね?」

と思われる方が多いのが実状です。また現代音楽に興味を少しもって現代音楽の解説書やホームページを読もうとしても それらは音楽をある程度知っている人向けに作られているので 普通の人にはあまり面白味がないのです。

確かに現代音楽には聞き難い曲もあるけれど歴史や時代背景を知ると 非常によくわかることも事実です。 ここでは現代音楽がどういう事情で出来たのか歴史を追って解説します。 お勧めの曲や 代表的な作曲家も紹介しますので,もし現代音楽に 興味が出てきたらぜひ一回聞いてみて下さいね。

ここでは現代音楽とは19世紀末から始まる印象派音楽以降の音楽を指すこととします。

■印象派音楽の出現

19世紀末,それはロマン派の華やかな舞台でした。しっかりとしたメロディー,そしてどっしりとした和音,すべてが計算づくで重厚な曲が作られていたのです。後期ロマン派としてリヒャルト-シュトラウスやマーラー、 レーガーが活躍していました。

<後期ロマン派の音楽の代表作>

・リヒャルト・シュトラウス「アルプス交響曲」

アルプスの登山、下山の様子を天才的なオーケストラレーションによって表現した曲。
曲の始まり、頂上に達した時の情景、雷雨に遭遇する場面はまるで映画を見ているようだ。

・マーラー「交響曲第9番」

マーラーが完成させた最後の交響曲。後期ロマン派の作曲家は重厚な音を作るために和音の技法を発展させる。この曲の最終楽章は長調と短調の境目が薄くなっており、まるで印象派の幕開けを感じさせる音楽になっている。

20世紀に近くなるとそのような頑丈な作曲法から少しづつ解放されていきます。 例えば 今までは作曲ではあまり薦められていなかった心地が良くない音の重ね合わせ (不協和音)を多用するようになりました。

この傾向をさらに進めたのがサティーに始まる印象派 音楽です。ネーミングは絵画の「印象派」からとられたものです。

絵画の印象派の作品で例えばモネやルノワールの作品を見ると,確実な輪郭がなく「なんとなく」の雰囲気が伝える作品となっています。印象派の音楽も「雰囲気」が全体の曲の中心を占める存在になります。どうしてぼやっとした曲にとなるかというと, 作曲の技法に特徴があるからです。

印象派音楽の特徴はいろいろな和音を使うことや, いままで禁止されていたような和音の進行使うことです 例えば不協和音の多用、古い中世の音楽のルールである教会旋法、和音を平行移動して作る平行和音の多用などがあげられます。

ではまず教会旋律から説明しましょう。

メロディーや和音を作る際には,そのルールとなる「調」というのが存在します。例えば,悲しい曲では「短調」楽しい曲では「長調」が使われます。1オクターブに 12の音が存在しますから短調,長調合わせて12ずつ,24調存在します。

たとえば、ミから始まる長調はホ長調と呼び、「ミ⇒ファ#⇒ソ#⇒ラ⇒シ⇒ド#⇒レ⇒ミ」という7つの音で構成されます。

教会旋律のフリギアはミから始まるもの、「ミ⇒ファ⇒ソ⇒ラ⇒シ⇒ド⇒レ⇒ミ」となり、ホ長調と違ってシャープが付きません。この旋律は非常に素朴な響きとなります。

フリギアは長調でも短調でもありません。このような教会旋法を使うと「短調」と「長調」を同時に自由にふらつく事ができる微妙な ニュアンスを表現できるのです。


また、ホ長調は7つの音で曲を構成しますが、5音音階と呼ばれるテクニック(5つの音で曲を構成する)を使うと同様に微妙なニュアンスを表現できます。実は5音音階は日本古来の曲でも使われている、日本人にとって身近なら音楽なのです。

平行和音という技法も特徴です。曲を作るときには、和音という同時に音を鳴らすことで、曲の厚みを出します。この和音を作るルールを若干緩めることで、繊細な曲を作ることができます。

このような技法は厳密な和音法にのっとていた当時の音楽に 大きな衝撃を与えました。

代表的な作曲家としてドビュッシー ラベル ルーセルなどがあげられます。この印象派音楽 は後進音楽家に強い影響を与え多くの巨匠がその 技法を模倣したのでした。

<印象派の代表作>

・ラベル「水の戯れ」
ラベルのピアノ曲の代表作。水のキラキラした輝き、動きを微妙な和音の動きで表現。
グリッサンドと呼ばれる特殊技法を取り入れていることでも有名。

・ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」

ドビュッシー初期の代表作。メロディーが上下にうねるように発展し、印象派の作風である長調なのか単調なのかがはっきりしない様子が良く感じ取れる。
後にディアギレフがバレエ化し、現代バレエに影響を与えることになる。

 

サティーはやがて印象派 を打破しようとするフランスの若手音楽家の精神的 支柱となります。この若手が「フランス6人組」とい われるものでミヨー,プーランク,オネゲルらがいます。彼らは1920年代のモダニズムのリーダーとなりましたが演奏機会は少なくなっています。特にミヨーは同時に複数の「調」を使う複調を多様し注目されました。

<フランス6人組の代表作>

・オネゲル「パシフィック231」

蒸気機関車「パシフィック231」が停車から疾走する様子をオーケストラで表現。
本当に蒸気機関車が走り出す音をオーケストラで忠実に表現しているため、音楽好きな人は一度は聞いて欲しい曲。

・プーランク「フルートソナタ」

近現代フルートソナタの代表作。プーランクはフランス作曲家らしい、洒落た音楽を数多く残している。クラシックのフルート曲は聴いていて重たい、と思う方は是非チェックしてほしい。

次回はストラヴィンスキーに代表される原始音楽を紹介します。

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2012.10.31

千代田区通勤・通学の人は朗報!クラシック音楽が無料で聴き放題できる裏技

 私は図書館が好きで、住んでいる近所の図書館を少なくとも1~2週に1回は行きます。最近勤務先の近くでも図書館があることがわかったため、行ってみたところ驚いたことがあります。

 なんと、千代田区図書館の利用者はWEB上でクラシック音楽が聞き放題できる「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」が無料で使えるのです。もちろん、自宅でもどこでもインターネットが接続できる環境であれば利用できます。このサービスは千代田区通勤・通学の人限定のサービスです。
 
 ナクソス・ミュージック・ライブラリー
 ナクソス・ミュージック・ライブラリーは大量のCDをリリースしているナクソスのブランドだけでなく、世界で566レーベル(執筆時)が参加している巨大なストリーミングサービスです。相当なマニアでも耐えられるぐらいの膨大なCDが全て聞くことができます。
本来は月1,890円かかるサービスですので、クラシック好きな方は是非試してください。
それでは、利用の仕方について簡単に書いておきます。
①千代田区の図書館で最初に利用カードの登録を行います。ナクソスのサービスを受けるには、この受付時に千代田区通勤・通学を示すものが必要です。(会社の名刺で大丈夫です。)
②千代田区図書館のページにログインします。
「ご利用状況照会(ログイン)」⇒「パスワードの登録」
にてパスワードを登録してください。
③再度、トップページに戻って、
「ご利用状況照会(ログイン)」⇒「利用者ログイン」
に行きます。
④左下の「NAXOSへログイン」を押すと、自動的にナクソス・ミュージック・ライブラリーのページに移動します。
なお、本サービスはストリーミングサービスなのでPCへのダウンロードはできないのでご注意を。
秋の夜長を素敵なクラシック音楽で過ごしましょう!

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2011.06.20

現代音楽作曲家の風景~「クセナキス」音楽と数学の融合

今日から新シリーズ「現代音楽作曲家の風景」をお届けします。なじみの少ない現代音楽作曲家を一人ずつわかりやすく紹介するコーナーです。

今日紹介する作曲家は「クセナキス」(1922-2001)です。クセナキスはギリシャ系の作曲家で、頭文字が「X」から始まる作曲家としても知られています。この人の作曲コンセプトは、ずばり「音楽と数学の融合」です。

クセナキスの師匠は現代音楽の巨匠メシアン。そのメシアンらは現代音楽の技法である12音音楽やトータルセリーと呼ばれる作曲技法を模索していました。

当時の音楽は「新しい」音楽を作るために、クラシック音楽では当たり前である「長調、短調」に従わない音楽を作っていたのです。12音音楽とは1オクターブ12音をある順序で並び替えを行うことで音楽を作ること、トータルセリーは音の高さだけでなく、音の強さ、音の長さなども含めて、あるルールで音楽を作ることです。しかしながら戦後これらの音楽技法は大きな突破口を見出せず閉塞感に陥っていたのです。

クセナキスはメシアンのアドバイスを受けて、数学を使って音楽のルールを作ることにします。その数学技法とは、例えば確率、あるいは積分方程式、群論。

しかし彼の音楽は数学技術の知識抜きで楽しめます。彼の音楽の印象といえば、「規則性とカオスの重なり」。ダイナミックでエネルギッシュな音楽構成の中に緻密な規則性が現れる、二面的な音楽が楽しめます。現代音楽があまりわからなくても、この二面性は楽しめると思います。さらに人間演奏技術の限界に挑んだ(というか限界を超えた?)曲も多く、技術力が高い演奏者の格好のアピール曲となっています。

さて、聴きやすくてクセナキスの特徴がわかる、お勧めの曲を3曲紹介しましょう。

「メタスタシス」

最初期の傑作。弦楽パートが細分化され、グリッサンドの速度が各部で異なって演奏されます。そのため、あたかも聞いている人が「音楽の雲」の中に入り込んだような、不思議な感覚になるのが特徴です。弦楽パート各部のグリッサンドの速度は、楽譜を見るとわかりますが、全体では中世の建築のような規則正しい構造を持っています。ただし、楽譜を見なくても、聴くだけでその構造はある程度聞き取れると思います。

「ルボンa+b」

クセナキスはギリシャ出身ということもあってか、打楽器に強い関心を頂いていました。そのため、打楽器をメインに据えた楽曲も相当数残しています。この「ルポン」は打楽器ソロ曲として非常に有名で、特に後半のルボンbは「一人で演奏しているとは思えない」(というかおそらく一人での演奏は無理?)躍動感溢れる曲が魅力です。打楽器奏者の周りにおびただしい打楽器を置いて、演奏者は変幻自在に打楽器を演奏します。ただし、あまりにも演奏が難しい曲なので、私がコンサートで聴いたときには撥が舞台に飛びました。

「ST-4」

弦楽四重奏の曲ですが、クセナキスにかかると一味違う。各パートの高速グリッサンドが炸裂。グリッサンド同士が複雑な規則性で重なることによって、緊張感と安定感が奇妙に同居する曲です。あまりにも演奏が難しいため、私がコンサートで聴いたときにはバイオリンの弓の毛が演奏中にぼろぼろ落ちてました。

今後も不定期に著名な現代音楽作曲家を紹介します。

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2010.11.16

[書評]西洋音楽史I―バロック以前の音楽

クラシック音楽で人気がある作曲家と言えば、バッハ、モーツァルト、ショパン、ドビュッシーなどを思い浮かべる人が多いだろう。これらの作曲家を歴史的に分類すると、バロック、古典派、ロマン派、印象派に相当する。クラシック音楽として普段聴いたり演奏されている曲の多くはこのジャンルに相当する。また、ある程度クラシック音楽を知っている人は現代音楽についても知識があるかもしれない。現代音楽をざっくり知りたい方は是非私が解説している現代音楽入門ページを読んで頂きたい。

ところで、かなりのクラシック音楽通でもバロック以前すなわち中世・ルネサンスの西洋音楽について詳しく知っている人は稀ではないのだろうか?中世の西洋音楽は知名度が低いため、多くの人によって誤解されている音楽である。例えばバロック以前の音楽は完成度が低いと言うイメージがあるようだ。実は私もそう思っていた。しかし本書で紹介されている代表的な中世音楽を聴くと、そのような先入観は完全に間違っていることに気がつくはずだ。

さて、本の紹介に移ろう。本書は一見するとよくある新書サイズの音楽解説書だが、とてもユニークな試みを行っている。この本はCDが付いてないにも関わらず、本で取り上げられている代表的な曲を聴くことができる。実は本にはパスワードとURLが書いてあって、読者はブラウザ上で音楽を再生可能な仕掛けになっている。使用している音源がNAXOSレーベルであることも興味深い。

NAXOSは古今東西のあらゆる西洋音楽を録音している意欲的なレーベルである。廉価な価格でCDをリリースしたり、PCでストリーム配信を積極的に行っていることでも知られている。更にはポピュラーではないが、音楽的に重要な音楽を数多く録音しているため、コアなクラシックファンには大変人気がある。今回本書で紹介している曲は実際Amazon等で収録CDを購入することができる。

中世・ルネサンス音楽の入門書である本書の特徴は、中世音楽が音楽的に発展する流れを歴史的背景を踏まえてわかりやすく解説しているところだろう。図表も豊富、新書サイズなのでさくさく読める。ただ、個々の作曲家に割いているページ数は1~2P程度であり特定の作曲家を深く知りたい人にはちょっぴり物足りないだろう。。もし本書を読んで特定の作曲家に興味を持った場合、その作曲家のCDを実際に買ってみたり、あるいはもう少し本格的な解説書:例えば皆川 達夫著「中世・ルネサンスの音楽 (講談社学術文庫)」を読んでみることをお勧めする。

せっかくなので本書で書かれている中世・ルネサンス音楽について超特急で解説をしておこう。バロック以前の西洋音楽はキリスト教と密接な関係があった。例えば有名なグレゴリオ聖歌はその名のとおり教会で式典時に歌われるものである。

グレゴリオ聖歌を聴くと現在の音楽とちょっと違って神秘的な薫りが感じられるだろう。これは実は旋律に特徴がある。普段聴きなれている西洋音楽では長調、短調によって旋律を分類することができる。しかしこの時代に音楽は教会旋律と呼ばれる、長調にも短調にも属しない独自な旋律から成り立っている。

記譜法も歴史が経つにつれ次第に確立していく。最初は相対的な音程、次第に絶対的な音程が記述され、最終的には音の長さをきちんと書くようになった。そのため、中世の音楽を演奏するとき、作曲時期によっては音の長さを歴史的考察によって解釈する必要がある。すなわち同じ曲でも演奏によって随分印象が変わってくる。本書では同じ曲で全く正反対の解釈による演奏が聞けるので、とても興味深い。

中世は単旋律から複雑なメロディーへ進化する歴史でもあった。最初はグレゴリオ聖歌のように皆が同じメロディーを歌うところから、次第にメロディーの掛け合いや対比をするようになる。これを音楽用語では対位法と呼ぶ。ルネサンス時代にはこれら対位法が高度に発展する。特に本書で紹介されているルネサンスの代表的作曲家パレストリーナのミサ曲は感動的に素晴らしい。

ほんのちょっとの解説ではあったが、中世・ルネサンスの音楽の雰囲気を感じて頂けたかもしれない。ただ音楽というのは実際聞いてみないと、その素晴らしさはわからないと思う。本書によって当時の歴史的の背景を読んで頂き、それを踏まえて音楽を聴くことで、古い形式の音楽の素晴らしさ、素朴さ、荘厳さを実際に体験して欲しい。きっと新鮮な感動が得られることだろう。

中世の音楽は合唱曲が多いので、ヒーリング効果も抜群である。クラシック音楽の歴史に興味がある人にはもちろんお勧めの本だが、ストレスで最近疲れた人にも気分転換に是非読んで聴いて頂きたい本である。

なお本書は音楽歴史書シリーズの第1巻でバロック音楽等の解説書も既にリリース済みである。バロック音楽やロマン派音楽に興味がある方も本シリーズをチェックして頂きたい。

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2010.05.01

[書評]十二音による対位法(南 弘明 著)

現代音楽に興味を持ったのは、偶然小学生のときに聞いたストラヴィンスキーの「春の祭典」だった。その後色々な現代音楽の本を読んでいて、「12音音楽」といわれる音楽があることを知った。12音音楽は今でも現代音楽に非常に影響を与える作曲技法である。

では12音音楽とは何だろう?詳しく知りたい方は私のWEBサイトの現代音楽入門「20世紀音楽の世界」をご覧頂くことにして、ここでは簡単な解説でとどめておく。1オクターブの中には(「ド」の音から次の高い「ド」の直前の音までには)、12個の音が存在する。きちんと書くと、「ド」「ド#」「レ」「レ#」「ミ」「ファ」「ファ#」「ソ」「ソ#」「ラ」「ラ#」「シ」の音が1オクターブに含まれる。(ここでは半音表記に#を使った。)この12音全てを1回ずつ現れる列に並べ、(これを音列、あるいはセリーと呼ぶ)、ある規則に従って作曲することを「12音音楽」と呼ぶ。

通常のクラシックやポップスなどは「和声」と呼ばれる「音の調和」を大事にするが、12音音楽では「対位法」と呼ばれるフレーズの重ね合わせが重要になる。12音音楽はバッハの時に盛んだった「フーガ」や「カノン」の技法をふんだんに取り入れている。12音音楽はシェーンベルクが「発明」し、ベルクやウェーヴルンが独自に発展していった。彼らの音楽を聴くと、調性がないのにも関わらずバッハのような「緻密な音」の薫りが漂う。12音音楽は対称性が支配する音楽なのだ。

さて、本の内容に移ろう。先ほど述べたように12音音楽は音列を作成することから始まる。
作曲は音列を順番に並べることのほか、ある音を軸にして、音の高低を逆にする「反転型」、列の音を逆から始める「逆行型」、逆行してさらに反転する「逆行反転型」に分類できる。つまり、一つの音列から色々なパターンにフレーズを変化することができるのだ。更にはそれぞれの音列の高さを平行に移動することができる。実はこの手のフレーズを作る操作は「群論」によって記述でき、理論書によっては詳しい解説があるようだ。

音列はある小節から逆行、反転等に操作することは一般的だ。更にはパートによってそれぞれ異なる音列を利用することも可能だ。このことから、緻密で複雑な曲を自由自在に作成することができる。

ところで、音列自体にも構造を取ることがあることを本では指摘している。例えば12音を3つに区切り、最初の4つの音を素材に次の4音は素材を反転、最後の4音は素材を逆行するような操作で音列を作る。譜面例を見ると、これらの音列の作成テクニックは驚きの連続である。音列自体が構造化することで、確かに音列を聞くだけで均整が取れた感じがする。

以上は紹介した本のほんの触りである。12音音楽の作曲技法について、わかりやすい解説書がないだけに、この本は貴重である。譜面例もたくさんあるので、イメージもしやすいだろう。現代音楽に興味がある人だけでなく、群論や対称性に興味のある方も是非読んで欲しい。そして、時間があればシェーンベルクらの曲を聴いて、譜面を見ることで隠れた対称性を見つけて欲しい。

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2009.06.11

ヒーリング効果たっぷりのクラシック音楽CD(IT疲れの皆様に)

梅雨に入り寒暖の差が大きくなって、結果的に肉体的にも精神的にも疲れやすい時期になりました。そんなあなたにぴったりな、実体験を基にヒーリング効果が大きいと感じたクラシック音楽を紹介します。IT技術者の皆様はBGMとして是非活用してください!

バッハ:バルティータ1番

バッハはクラヴィーア(昔のピアノのようなもの)に対する曲をたくさん書いています。有名なものでは平均律クラヴィーア曲集、イタリア協奏曲、フランス組曲などが挙げられます。このパルティータもクラヴィーアの曲として作曲されました。パルティータとは「組曲」を意味する言葉で、短い曲が複数あつまって今回紹介するパルティータ1番は構成されています。

このCDは名ハーピスト吉野直子さんの演奏による、ハープ編曲版です。パルティータ1番は明るい曲調なのですが、それがハープの音色と本当にマッチして、聞いていると心の底から安らぐ感じがします。バッハというと、フーガのように小難しいイメージがあるかもしれませんが、この曲は聴きやすいので是非お試し下さい。ハープの音色がきっと心を癒してくれます。

バッハ:ゴルトベルク協奏曲

もう1曲バッハ。この曲は不眠症の人のために作られたというエピソードで非常に有名な曲で、実際不眠症治療のために活用されているとのことです。最初のゆっくりとした長調のテーマがあって、それを発展していきます。最後の締めでもう一度テーマが表れて終わりです。長さが一時間近くもあるので普通の人は聞くと心が落ち着いてだんだん眠たくなるかもしれません。。。めでたし、めでたし。

っが、作曲に興味のある人はこの音楽は驚愕の連続です。一つ一つの変奏が本当に凝っていて、凄いの一言に尽きます。もし可能であれば是非楽譜を見てください。主題があらゆる形(テーマが逆行したりもしている!)に応用されて表れます。音楽に興味のある方は逆に眠れなくなるかも。

モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス

この曲はモーツァルト晩年の傑作といわれ、小規模ならが心が洗われるような神秘的な響きがします。実際この曲は宗教合唱曲で、主キリストを讃えたフレーズが歌われます。

個人的な意見ですが、この曲は所謂モーツァルト臭さがかなり抜けた曲に感じられます。小さいときにピアノレッスンを受けた人はモーツァルトやベートーベンを聞くのに抵抗がある人が意外と多いのですが、そんな人にも大丈夫です。

曲調はゆっくりとして明るいです。心がイライラしたときに是非聞いてください。きっとリラックスできます。女性アカペラグループ、アンサンブル=プラネタの演奏でどうぞ。

アレグレ:ミゼレーレ
フォーレ:ラシーヌ賛歌

どちらも合唱曲。ミゼレーレは男声アカペラ合唱の傑作で、かのモーツァルトが門外不出のこの曲を記譜したという伝説が残っています。この曲はルネサンス末期~バロック初期というかなり早い年代に作曲されているので、今まで接する機会の多いようなクラシック音楽とは調性がやや違うように感じられるかもしれません。人によってはグレゴリオ聖歌のような印象を持たれると思います。

フォーレは時代的にはロマン派後期に属するフランスの作曲家で、代表作のレクイエムが有名です。弟子として印象派の大家、ラベル(ボレロで有名)がいます。フォーレの曲の特徴として絶妙な和音使い、調性の展開が挙げられ、印象派の先取りとも思えるような曲も書いています。この曲はフォーレの最初期の作品で、明るくとても明快な曲ですが、フォーレの特徴がうっすら表れています。ヒーリング曲の特集として注目されたCDでどうぞ。

フォーレの小品としては、パバーヌもお勧めです。こちらはCMのBGMとして使われたことがあります。

 

ペルト:鏡の中の鏡

この曲だけ年代的には現代音楽に入るのですが、とても聞きやすいので安心して下さい。歴史的なことを少し説明します。現代音楽は戦中戦後にトータルセリー、12音音楽のようなシスマティックな曲を作ることが流行しました。しかし、それが行き過ぎ、結果的に普通の聴衆から理解しがたい曲が大量生産されることになります。

そこで、現代音楽への揺り戻し運動、すなわち聴衆にダイレクトに訴えかけるような音楽を作ることが少しずつ注目されていきました。ペルトもその一人です。

「鏡の中の鏡」は非常にスローテンポでピアノと旋律楽器(ここではバイオリンなど)による演奏が行われます。ピアノは単純な分散和音を奏でて、その上で旋律音楽がゆったりとしたメロディーを演奏するのですが、そのシンプルさ故、心に直接届くく美しさがあります。眠れないときに是非お聞き下さい。

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どうでしょうか?合唱曲やハープ、パイプオルガン関連のクラシック音楽はヒーリング効果が高いと思われるので、是非自分に合った音楽を探してみてください。

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2009.06.09

初夏の夜長に現代音楽ってどうよ?~Vol.3「インパクトのある曲」編

現代音楽のお勧めCD紹介コーナーも今回(3回目)で最終回です。
1、2回目は以下のとおりです。

秋の夜長に現代音楽ってどうよ?~Vol.1「聞きやすい曲」編
冬の夜長に現代音楽ってどうよ?~Vol.2「カッコいい曲」編

今回は現代音楽の中でもインパクトが強く、また音楽史に影響を与えた曲を紹介したいと考えています。

シュトックハウゼン「コンタクテ」

シュトックハウゼンといえば、トータルセリーや電子音楽を確立したことで有名です。特にノイズが好きな人には「神」扱いされているようです。

本当はシュトックハウゼンのCDとして、電子音のみで作曲した「習作Ⅰ」「習作Ⅱ」、少年の声と電子音を組み合わせた「少年の歌」を紹介したかったのですが、残念ながらAmazonで取り扱っていないようです。(タワーレコードとかにはありますが、この手の音源はシュトックハウゼンの個人レーベル(!)でしか売ってなく、小売店経由だと結構高いです。しかし音楽史や現代音楽に興味のある方なら絶対買うべき1枚です。)

そこで、今回取り上げるのは既に録音した電子音にピアノと打楽器が「ライブ」で演奏するという、現代音楽界に大きな影響を与えた「コンタクテ」という曲を紹介します。

当時の電子音は今のシンセサイザーとは違い、サイン波や矩形波のようなものを扱っていました。ほとんどBEEP音です。これを緻密な計算のもと(セリーの影響を強く受けている)、周波数や音の強弱等を決定して、音楽として形成したのです。テクノなどの曲に慣れ親しんでいる私たちの世代は強烈な印象を受けると思います。

コンタクテによって、このような電子音と伝統的なピアノや打楽器を「リアルタイム」で合奏することに成功し、この結果電子音楽は大きく発展を遂げることになります。

そして、シュトックハウゼンといえば、ある意味伝説的に有名な一枚も忘れられません。

シュトックハウゼン「ヘリコプターカルテット」

この曲は弦楽四重奏のメンバが4つのヘリコプターに分乗し、ヘリコプターに「乗りながら」曲を演奏するという、とても奇抜でユニークな作品です。実際の演奏では地上でミキシングされます。シュトックハウゼンの大作オペラ「リヒト(光)」の一曲です。

一見「トンデモ」に思えますが、ヘリコプターの上昇音とストリングのグリッサンドがうまく掛け合って、意外とフツーに聞こえます。機会があったら是非聞いてみて下さい。

シュトックハウゼンの初期作品は非常に高い評価がされていますが、中後期作品はこれから客観的な評価がされることでしょう。シュトックハウゼンは来日コンサートで一度見たことがあるのですが、とてもパワフルな印象を受けました。

クセナキス「ST/4」

クセナキスといえば、数学を駆使して作曲をしたことで知られています。ST/4は弦楽四重奏のための曲ですが、グリッサンドを非常に多用し聴衆に強烈な印象を与えます。各プレイヤー間でグリッサンドの見事な掛け合いをするので、現代音楽にあまり慣れ親しんでない人も楽しめると思います。STシリーズにはオーケストラの作品ST/48もあります。

クセナキスの作品の特徴として、規則的な運動や、その反対のカオス状態がうまく混在していることが挙げられます。この作品もその特徴がうまく出ているのでクセナキス入門にはぴったりです。

ちなみに、この曲は超絶技巧曲としても知られています。一度コンサートで聞いたことがあるのですが、迫力満点で見ているほうも興奮します。

メシアン:音価と強弱のモード

シェーンベルクが考案した12音音楽は、それまでの古典的な作曲技法とは異なり、大きな衝撃を与えました。(*フーガのテクニックを活用している)12音音楽は戦後になると、トータルセリーといわれる技法に発展します。12音音楽は1オクターブ12音をある順番で並べ(これをセリーと呼ぶ)、これをフーガの技法を活用しながら発展させるのですが、トータルセリーは音高だけでなく、音の強弱、音の長さ、音のアタックなども規則性を持たせることを目指しました。このメシアンの作品は、トータルセリーの意義を問う作品として作られ、当時の現代音楽界に大きな影響を与えました。

この曲はトータルセリーの特徴、すなわち音の強弱や音の長さがマチマチな曲なので、とても不安定な曲調に聞こえるのが特徴です。古典的なクラシックでは、まず受けたことがない印象を受けるでしょう。超絶技巧曲としても知られています。

ライヒ:「Come Out」「ピアノフェーズ」

大学の音楽の時間に「Come Out」を聞いた衝撃を、今でも忘れられません。ライヒはミニマル音楽の代表的な作曲家です。ミニマル音楽とは短いテーマを繰り返し、そして少しずつ発展しながら曲を構成するのが特徴です。今回取り上げたCDはライヒの初期作品を集めたものです。

「Come Out」は、「Come Out」と発声したテープを使い、それを様々な形に変容・発展させていく音楽となっていて、一種の変奏曲のような感じを受けるでしょう。Come Outという発音が一曲の中に何百回も繰り返されるので、宗教的な儀式を連想する人もいるかもしれません。

「ピアノフェーズ」は2台のピアノのための曲で、あるフレーズを2台のピアノが少しずつ(時間的な意味で)ずらしながら弾いていきます。フェーズは理工系用語の波の「位相」であり、フレーズの「ずれ」を聴衆に感じさせることにこの曲の意義があります。このずれというものが古典的な音楽の「X音符」という単位ではなく、ごくわずかな時間の「ずれ」が少しずつ拡大することから、とてもインパクトのある作品となっています。

このCDはミニマル音楽の原点といえるもので、ミニマル音楽の一般的なイメージである「カジュアルな感じ」とは一線を画すものですが歴史的な作品ですので、現代音楽に興味のある人は聞くことを強くお勧めします。

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如何だったでしょうか?インパクトのある作品というと、他にはナンカロウのピアノエチュード、シェルシの「山羊座の歌」などが挙げられます。是非CDを聞いてみて現代音楽と現代音楽作曲技法に興味を持ってくださいね!

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2008.12.30

冬の夜長に現代音楽ってどうよ?~Vol.2「カッコいい曲」編

さて、現代音楽入門として秋の夜長に現代音楽ってどうよ?~Vol.1「聞きやすい曲」編を書きました。

冬になったので第2弾は予告どおりVo2.「カッコいい曲」編を。クラシックとは違い、超絶技巧、クールな曲がオンパレードなのが現代音楽の良いところ。前回同様、曲を聴く前に「20世紀音楽の世界」で現代音楽の歴史を一通り見ておくと理解しやすいと思います。

□西村 朗:弦楽四重奏第2番「光の波」

日本を代表する現代音楽家、西村 朗の代表作のひとつ。現代音楽演奏家のスペシャリスト、アルディッティカルテットの委嘱作品だけに超絶技巧のオンパレード。例えば普通の弦楽器では普通演奏しない超ハイトーンの続出、ハーモニクス、複雑なリズムの掛け合わせ。後半はインドネシアをケチャを彷彿させるエキゾチックでリズミカルな音楽が始まり、聞いていてとてもエキサイティングになる。単なる技巧的作品で留まらず、聞き手を常に刺激する。

□新実徳英:「風神雷神」~パイプオルガンと和太鼓のための

この曲はとてもユニーク。パイプオルガンと和太鼓のための2重協奏曲である。パイプオルガンと和太鼓と聞くと一見ミスマッチなのだが、パイプオルガンの厳粛な音色に和太鼓の重低音というのがとても合う。

興味深いのは長いアドリブ部分があること。コーダに入る前にパイプオルガンと和太鼓がアドリブを渡され、演奏者のフィーリングによって自由自在な掛け合いが始まる。当然同じフレーズをほかのCDや演奏で聞くことはできない。

可能であればTV番組や生演奏で曲をチェックしてほしい。和太鼓の演奏する姿がダイナミックで、ビジュアルでも楽しめる曲である。

和太鼓を使ったオーケストラ曲といえば松下功:和太鼓協奏曲「飛天遊」も有名。

いくつもの和太鼓を超絶技巧でたたく姿は凄い迫力。ベルリンフィルでもケント=ナガノによって演奏され、当時大きな話題となりました。

□リゲティ:ピアノエチュード

邦人作品ばかり紹介したので、ここで現代音楽の大家、リゲティの作品。

さて、Perfumeの「ポリリズム」という作品を少し解説します。ポリリズムとは「ポリ」(複数)+「リズム」という意味で、独立したリズム(あるいは拍)を同時に演奏することを指します。

このポリリズムの技法はリゲティによって数多く追求されていて、ピアノエチュードはまさにその研究成果の代表作。

リゲティはアフリカンリズムに注目して、単純な規則から複雑なリズムが生成されることに注目しました。

一見カオスティックな曲の中に、きちんとしたリズムが聞き取れることは驚きです。

そのほかにも規則正しい音型の変化により(無限上昇や無限降下など)現代音楽特有のモダンさはあるものの、聴き取りやすい響きを感じることができます。

非常に技巧を有する作品ですが、演奏効果が高いため、多くのピアニストによって演奏されつつあります。

□プロコフィエフ:ピアノソナタ第7番「戦争ソナタ」

 

第2次世界大戦中に作曲。曲は調性が薄く無調に近い。プロコフィエフ自身が有名なピアニストであるため、技巧的な部分も多々ある。

特に最終楽章は7拍子で書かれた一番有名な楽章。最後に音の大きな跳躍が続く場面があり、聞きごたえがある。

□クセナキス:ルボンa+b

20世紀になって再注目を浴びた楽器は何かといえば、それは「打楽器」だろう。

現代音楽ではリズムがメロディや和音と同様に重要視され、その結果打楽器はソロ作品を生むまでにもなる。もっとも日本人は和太鼓に慣れているので、打楽器だけの作品というのは全く違和感がないのだが、西洋の人にとっては画期的なことらしい。

その最初期の作品はヴァーレーズの「イオニザシオン」。サイレンまで登場するスパイスが効いた作品だ。

さて、ここで作曲家のクセナキスを紹介したい。そもそも戦後音楽の主流は12音音楽の継承だった。12音音楽とは普通のメロディーの法則に変わり、12音を規則的に組み合わせして音楽を作ること。これをシュトックハウゼンやブーレーズがトータルセリーという音の長さや音の強弱らも規則性を生み出すところまで発展させる。ところでクセナキスは音の規則性としてなんと数学やアルゴリズムを使うことを思いついた。その結果独特の音響とリズムを生み出すことに成功した。

このルボンは打楽器ソロとして非常に有名な作品だが、超絶技巧曲としても知られる。あまりに難しすぎて、私が目にした演奏では演奏中に撥が吹っ飛んでしまった。ぜひ曲の躍動感を楽しんで欲しい。このクセナキス、演奏家のことをあまりに気にせずに作曲しているので「演奏不可能」「演奏不可能な近い」部分があることが多い。演奏家がどう曲にチャレンジしているかを見るのもとても興味深いところである。

ルボンに興味が持てば、シュトックハウゼン「ツィクルス」をお勧めしたい。

この曲も演奏の超難易度が高い作品。シュトックハウゼンが極めたトータルセリーの要素に偶然性というパラメーターも含まれている。楽譜が実はリング状になっていて右周りから演奏しても、左回りから演奏しても、「どこから」演奏してもよい!ことになっている。更に演奏スピードも演奏者に任せられている。もし可能なら楽譜を見ながらCDを楽しんで欲しい。

□バーバー:バイオリン協奏曲

バーバーといえば「弦楽のためのアダージョ」があまりにも有名。よく訃報や葬式の時に流れる重厚で荘厳な音楽ですよね。でも「ピアノソナタ」のようなとても現代音楽的な作品もある。バーバーでぜひ聞いてもらいたいのがこのバイオリン協奏曲。特に第3楽章はバイオリンソロが急速に細かいメロディを演奏し(いわゆる無窮動)、とても緊迫した時間を奏でていく。最近演奏回数が増えているので、クラシックファンでも是非チェックして欲しい。

如何だったでしょうか?ややクールな作品が多かったのですが、聞いてみると興奮する作品が多いはず。一度は聞いてみて欲しいものです。ちょっと技巧的な作 品が多かったかな?カッコいい曲としてはメシアンの「黒つぐみ」、「聖霊降臨祭のミサ]から「閉祭」、デュティユー「ソナチネ(フルートのための)」、 ブーレーズの「2重の影の対話」、武満徹「夢窓」なども面白い。

第3弾は「インパクト」のある作品です。いろいろな意味でネタになる作品教えます!期待して下さいね。

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2008.11.03

秋の夜長に現代音楽ってどうよ?~Vol.1「聞きやすい曲」編

Blogを始める前から「Tomo's Homepage」というWebページを運営している。私の知人の多くはこのWebページをP2Pの解説ページだと思っているが、実は現代音楽入門のコーナーとして立ち上げたのが始まりだ。元祖Webページは大学院院試が終わった直後に作り始めたので、もう10年以上前のことになる。

P2Pもそうなんだけども、現代音楽(というより現代芸術全般かな?)って普通の人にとって物凄い偏見があると思う。でも実際に聞かせると意外に聞ける!とかクラシックより面白いよね、という人が多い。現代音楽に触れる機会は残念ながら少ないので、多くの人が偏見を持っているのが実情なんだろうなあ、と考えている。

話は変わるけども、テクノとかノイズとか好きな人は現代音楽に傾倒する人が多かったりする。というのは、これらのルーツを作った人が最近亡くなったシュトックハウゼンなどの現代音楽家の大家らしい。もっとも私はテクノとかノイズはあまり聞かないので、現代音楽とテクノ、ノイズの関係については詳しくは解説できないけども。(*ちなみにPerfumeは好きだよ!)

 

ということで、ネタ的にも教養のためにも「買って損はないよ!」という現代音楽を少しずつ紹介したい。本シリーズは以下のように3回に分けて現代音楽を解説する予定だ。

Vol.1 「聞きやすい曲」
Vol.2 「カッコいい曲」
Vol.3 「インパクトありすぎ!の曲」

タイトルどおりに秋の間に解説を終えることができるかビミョーであるが、張り切って解説してみたい。あと、曲を聴く前に「20世紀音楽の世界」で現代音楽の歴史を一通り見ておくと理解しやすいと思う。なお今回紹介する現代音楽とは、大まかには「第二次大戦戦中戦後に作られた曲」を指すこととしたい。

この曲もお勧め!というコメントの方は、はてブコメントでどうぞ。

本編はVol.1 「聞きやすい曲」だ。現代音楽アレルギーの人でも聞ける曲をピックアップしてみた。まずはこれで、現代音楽って結構聴けるね~というのを感じて欲しい。

□カプースチン:「8つの演奏家用エチュード」

→カッコいい!そしてスゴいテクニックの連続

21世紀に入ってから注目されてきたロシアの作曲家。ジャズとクラシックの技法を融合したことで知られ、楽譜を見ると超絶技巧のオンパレードである。カプースチンの楽譜は日本の出版社から何点か出版されている。

彼の曲はジャズのカッコよさと超絶技巧によるシビレにつきると思う。ジャズが好きな人なら買って問題はないだろう。彼の作品集、特に前奏曲集などは、似たり寄ったりした曲が多くなり、一本調子になる場合がある。しかし、「8つの演奏家用エチュード」は個性的で且つ劇的な作品が組み合わさることにより、聞いている人を驚きと興奮の連続に導くだろう。

□ライヒ:ナゴヤマリンバ

→ポップで、時間変化が楽しい音楽

短いフレーズを繰り返し、ゆっくり変化させることによって聴衆に独特な雰囲気を感じ取る、ミニマル音楽。ライヒはミニマル音楽の大家であり、今年は来日公演を行い注目された。フレーズはポップな感じでクラシックや現代音楽を聴いているとは思えないぐらい。TVニュースのBGMなどにも使われている。

彼のフレーズの繰り返しテクニックは、理系の人にとっては刺激的だろう。いつの間にかにフレーズが変容している様は、まるでエッシャーの「だまし絵」を見ているかのようんだ。そして先ほど書いたようにポップなフレーズなので聞いていて「こってり」した感じがしない。ライヒの曲は「じっくり聴く」のと「流し聞き」では大分印象が違うと思う。

ナゴヤマリンバは、日本の団体による委嘱作品。彼の本格的な作品を聞く前の入門編としては丁度良い曲だろう。なお、今回紹介したCDはライヒ・ベストという、ライヒ音楽の入門CDである。ライヒは最初期は「Come out」「It's gonna rain」(いずれもテープ音楽)やピアノ・フェーズ(ピアノ曲)といったかなり挑戦的な曲を書いている。ライヒに慣れたら是非チャレンジして欲しい。

□ピアソラ:「鮫」「ル・グラン・タンゴ」

→大人の雰囲気。BARのBGMで流れている感じ。

 

ピアソラというと、タンゴ音楽の巨匠。タンゴ音楽にクラシックの技法を取り入れて「前衛タンゴ」という音楽分野を作った。彼の曲を聴いてみるとわかるのだが、節々に「対位法」と呼ばれる音楽の技法(フーガにようにフレーズが駆け合いすること)が使われ、それが単なるタンゴ音楽から脱皮した様子がわかる。

ピアソラの音楽はバイオリニスト「クレーメル」やチェリスト「ヨーヨーマー」の紹介によって世に広く知れ渡るようになった。特に「リベルタンゴ」はCMでも流れたのでおなじみの曲である。

ここでは「リベルタンゴ」の他に是非聴いて欲しい小曲品集を紹介CDとして挙げた。クレーメルの名演奏を楽しんで欲しい。

□吉松 隆:プレイアデス舞曲

→繊細に、そして叙情的に

日本を代表する現代音楽家として幅広い活動をしている吉松氏。彼の90年代以降の音楽の特徴として、わかりやすい音楽を積極的に作曲していることが挙げられる。といっても単にわかりやすい音楽を作曲しているわけではない。

楽譜を実際に見ると、変拍子を積極的に使ったり、あるいはギリシャ旋律法を用いるなど随所に現代音楽技法が使われている。

プレイアデス舞曲はピアノ組曲であり、繊細で叙情的な音楽の世界である。聴けばあわただし日常を忘れて心を潤してくれるだろう。またピアノが弾ける人は楽譜を買って是非演奏にチャレンジして欲しい。(*ちなみに聴いた感じ以上に演奏は難しいです。)

彼は小品だけでなく、交響曲や協奏曲など大規模な作品を残している。プレイアデス組曲を気に入ったら、カッコいい感じの「サイバーバード協奏曲」(サクソフォン協奏曲)か叙情的な「メモフローラ」(ピアノ協奏曲)をどうぞ。

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