[書評]数の世界(ブルーバックス)
たまたま本屋に寄ったら、ブルーバックスの新刊「数の世界」が置いてあったので立ち読みした。
タイトルからして整数論の話と思いきや、邦書ではあまり解説書が無い四元数や八元数の解説だったので、思わず買ってしまった。
内容は実数→複素数→四元数→八元数とより次元が高い数の世界を紹介し、最後にさらなる拡張や物理学の応用が書かれている。
数の世界 自然数から実数、複素数、そして四元数へ (ブルーバックス)
数学のレベルとしては、高校レベルがわかれば最後まで読めると思う。
特にこの本で面白いのは、次の2つだ。
(1)四元数、八元数で四則演算の規則が緩やかになっていくのが理解できる。
通常、実数や複素数は、交換則や分配則が守られる。交換則は掛け算に順番が無いこと、結合則は掛け算のかっこに関する規則だ。
ところが、四元数や八元数では掛け算の順番により結果が変わり、さらに八元数では結合則まで崩れていく。
ただ、この演算のルールが緩やかになることにより、四元数では3次元の回転を簡単に表すことができる。
(複数の三次元の回転は、順番によって結果が違うことに注目!)
(2)なぜ三元数は無いのかが理解できる。
実数→複素数となったら、次は三元数と言うのがありそうだが、それは無い。これは、四則演算ができる「体」と言う構造からの要請による。
四元数は最近コンピューターグラフィックで回転や鏡映を計算するのによく使われているので、コンピューターグラフィックで実際プログラミングをする人は読んでおいて損はないだろう。本では四元数によってなぜ回転や鏡映が表せるのか、わかりやすく説明している。
八元数は現在それほど応用されていることはないが(物理学などで応用が始まっている)その後の拡張も含めて読み物として興味深い。
この本の特徴は、八元数の章まで読むと、四元数や八元数の観点から実数や複素数とは何か、と言うことを改めて気づかされることだ。例えば、四元数の逆元を公式を見出すと、複素数の公式と同じ式が出てくることがわかる。すると、複素数での逆元の公式の意味が真の意味で理解でき、新鮮な気持ちになる。
数学には興味があるけども、難しい解説はちょっと苦手という人には、実数での常識的な世界が破られる、四元数や八元数は大きな刺激が与えられるのでお勧めの本だ。
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