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2015.02.08

現代音楽入門その1-印象派音楽の出現

現代音楽入門WEBサイト「20世紀音楽の世界~現代音楽って何?~」ですが、作成してから時間が経ちましたので、補筆したものを当blogで紹介します。

■現代音楽とは?

最近,クラシックの演奏家やBGMでも20世紀の音楽 を取り上げる機会が多くなっています。 その反面,20世紀の音楽の情報は不足していて

「現代音楽って聞いていて難しい音楽のことでしょう?ちょっと聞くのをためらうよね?」

と思われる方が多いのが実状です。また現代音楽に興味を少しもって現代音楽の解説書やホームページを読もうとしても それらは音楽をある程度知っている人向けに作られているので 普通の人にはあまり面白味がないのです。

確かに現代音楽には聞き難い曲もあるけれど歴史や時代背景を知ると 非常によくわかることも事実です。 ここでは現代音楽がどういう事情で出来たのか歴史を追って解説します。 お勧めの曲や 代表的な作曲家も紹介しますので,もし現代音楽に 興味が出てきたらぜひ一回聞いてみて下さいね。

ここでは現代音楽とは19世紀末から始まる印象派音楽以降の音楽を指すこととします。

■印象派音楽の出現

19世紀末,それはロマン派の華やかな舞台でした。しっかりとしたメロディー,そしてどっしりとした和音,すべてが計算づくで重厚な曲が作られていたのです。後期ロマン派としてリヒャルト-シュトラウスやマーラー、 レーガーが活躍していました。

<後期ロマン派の音楽の代表作>

・リヒャルト・シュトラウス「アルプス交響曲」

アルプスの登山、下山の様子を天才的なオーケストラレーションによって表現した曲。
曲の始まり、頂上に達した時の情景、雷雨に遭遇する場面はまるで映画を見ているようだ。

・マーラー「交響曲第9番」

マーラーが完成させた最後の交響曲。後期ロマン派の作曲家は重厚な音を作るために和音の技法を発展させる。この曲の最終楽章は長調と短調の境目が薄くなっており、まるで印象派の幕開けを感じさせる音楽になっている。

20世紀に近くなるとそのような頑丈な作曲法から少しづつ解放されていきます。 例えば 今までは作曲ではあまり薦められていなかった心地が良くない音の重ね合わせ (不協和音)を多用するようになりました。

この傾向をさらに進めたのがサティーに始まる印象派 音楽です。ネーミングは絵画の「印象派」からとられたものです。

絵画の印象派の作品で例えばモネやルノワールの作品を見ると,確実な輪郭がなく「なんとなく」の雰囲気が伝える作品となっています。印象派の音楽も「雰囲気」が全体の曲の中心を占める存在になります。どうしてぼやっとした曲にとなるかというと, 作曲の技法に特徴があるからです。

印象派音楽の特徴はいろいろな和音を使うことや, いままで禁止されていたような和音の進行使うことです 例えば不協和音の多用、古い中世の音楽のルールである教会旋法、和音を平行移動して作る平行和音の多用などがあげられます。

ではまず教会旋律から説明しましょう。

メロディーや和音を作る際には,そのルールとなる「調」というのが存在します。例えば,悲しい曲では「短調」楽しい曲では「長調」が使われます。1オクターブに 12の音が存在しますから短調,長調合わせて12ずつ,24調存在します。

たとえば、ミから始まる長調はホ長調と呼び、「ミ⇒ファ#⇒ソ#⇒ラ⇒シ⇒ド#⇒レ⇒ミ」という7つの音で構成されます。

教会旋律のフリギアはミから始まるもの、「ミ⇒ファ⇒ソ⇒ラ⇒シ⇒ド⇒レ⇒ミ」となり、ホ長調と違ってシャープが付きません。この旋律は非常に素朴な響きとなります。

フリギアは長調でも短調でもありません。このような教会旋法を使うと「短調」と「長調」を同時に自由にふらつく事ができる微妙な ニュアンスを表現できるのです。


また、ホ長調は7つの音で曲を構成しますが、5音音階と呼ばれるテクニック(5つの音で曲を構成する)を使うと同様に微妙なニュアンスを表現できます。実は5音音階は日本古来の曲でも使われている、日本人にとって身近なら音楽なのです。

平行和音という技法も特徴です。曲を作るときには、和音という同時に音を鳴らすことで、曲の厚みを出します。この和音を作るルールを若干緩めることで、繊細な曲を作ることができます。

このような技法は厳密な和音法にのっとていた当時の音楽に 大きな衝撃を与えました。

代表的な作曲家としてドビュッシー ラベル ルーセルなどがあげられます。この印象派音楽 は後進音楽家に強い影響を与え多くの巨匠がその 技法を模倣したのでした。

<印象派の代表作>

・ラベル「水の戯れ」
ラベルのピアノ曲の代表作。水のキラキラした輝き、動きを微妙な和音の動きで表現。
グリッサンドと呼ばれる特殊技法を取り入れていることでも有名。

・ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」

ドビュッシー初期の代表作。メロディーが上下にうねるように発展し、印象派の作風である長調なのか単調なのかがはっきりしない様子が良く感じ取れる。
後にディアギレフがバレエ化し、現代バレエに影響を与えることになる。

 

サティーはやがて印象派 を打破しようとするフランスの若手音楽家の精神的 支柱となります。この若手が「フランス6人組」とい われるものでミヨー,プーランク,オネゲルらがいます。彼らは1920年代のモダニズムのリーダーとなりましたが演奏機会は少なくなっています。特にミヨーは同時に複数の「調」を使う複調を多様し注目されました。

<フランス6人組の代表作>

・オネゲル「パシフィック231」

蒸気機関車「パシフィック231」が停車から疾走する様子をオーケストラで表現。
本当に蒸気機関車が走り出す音をオーケストラで忠実に表現しているため、音楽好きな人は一度は聞いて欲しい曲。

・プーランク「フルートソナタ」

近現代フルートソナタの代表作。プーランクはフランス作曲家らしい、洒落た音楽を数多く残している。クラシックのフルート曲は聴いていて重たい、と思う方は是非チェックしてほしい。

次回はストラヴィンスキーに代表される原始音楽を紹介します。

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