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2010年6月の2件の投稿

2010.06.18

第2回Twitter研究会は9月に開催予定です

 昨年12月開催したTwitter研究会ですが、その様子をコラムとして執筆しました。情報処理学会誌6月号に掲載されていますのでチェックをお願いします。Twitter研究会の様子を振り返りたい方、残念ながらTwitter研究会には参加できなかったけれども状況は知りたい方等お勧めの内容となっています。

 また情報処理学会誌がお手元にない方はpdf版を有料で入手できます。
http://fw8.bookpark.ne.jp/cm/ipsj/search.asp?flag=6&keyword=IPSJ-MGN510615&mode=PRT
なお、最初のページだけ無料で見ることができます。

さて、本来なら情報処理学会6月号の発刊に併せて、第2回Twitter研究会の開催日をお知らせする予定でした。しかしながら残念なことに開催日は未だFIXしていません。現在の状況ですが、9月の土曜日に東工大で開催することで最終調整をしています。

講師の方ですが、Twitter界隈で有名な方が続々登場予定です。ご期待下さい。なお、学生講師の方をもっと増やしたいと考えていますので、学生講師の心当たりのある方は@toremoro21までご連絡下さい。自薦・他薦は問いません。学生講師の方で遠方から参加したい方は交通費・宿泊費を一部負担する予定です。(負担額については調整させてください。)

なお、私のTwitter操作の不手際で、DM内容の一部を削除してしまいました。そのためTwitter経由で講師をご応募した方の情報について、私が一部把握できていない可能性があります。講師のご応募したのにも関わらず、講師用MLのご案内が未だに届いてない方は、お手数掛けますがご一報下さい。

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2010.06.05

[書評]ケプラー予想(ジョージ・G・スピーロ著)

 個人的な話で恐縮だが、レジ袋に買ったものを入れるのが不得手だ。主婦の人が手際よく、それも効率良くレジ袋に入れる様を見ると感心する。手早くきっちりとレジ袋に物を入れるには何らかの法則があるのだろう。

 

 この法則をちょっとだけ数学的に考えてみよう。今、大きさが一定のグレープフルーツがある。これをレジ袋には最大何個入るのだろうか?またその場合、グレープフルーツはどのような配置になっているのだろうか?

 

 「ケプラー予想」のケプラーは有名な天文学者だ。ケプラーはティコ=ブラーエが観測した膨大なデータを元に、有名な「ケプラーの法則」を見出した。これは惑星の運動に関わる法則であり、ニュートンが万有引力の法則を築きあげるきっかけになった。このようなエピソードを聞くと、ケプラー予想とは天文学に関わる予想だと思ってしまうだろう。しかし実際には、ごく最近まで未解決だった幾何学に関わる予想である。

 

 

 ケプラー予測を超意訳するとこんな感じだ。
「3次元において、球を一番効率的に詰める方法は、面心立方格子あるいは六方最密格子である。」面心立方格子や六方最密格子は高校の化学で習った、懐かしい結晶構造の一つである。実は、面心立方格子と六方最密格子は見る方向を変えると一緒の構造と捉えることができるため、以後は両方を指して面心立方格子と言うことにする。ケプラーは、とある小冊子でこの予想を行ったが証明はしなかった。

 

 ケプラー予想は、球をある定期的な構造に限定にするのであれば、かなり前に肯定的に解かれていた。3次元はかの天才数学者ガウスによって解かれている。球の位置が定期的な構造を持っている場合は、2次元にしろ、3次元にしろ解決に重要なキーとなるのは、格子の大きさである。

 

 格子とは隣接する球の中心同士を結ぶ線によって形成された網目を指す。2次元であれば、2つのベクトル(これを格子ベクトルと呼ぶことにしよう。)を定数倍することによって、全ての球の中心の位置を示すことができる。3次元であれば、格子ベクトルは3つである。

 

 格子ベクトルで囲まれた部分の大きさ(2次元なら面積、3次元なら体積)を格子体積と呼ぶことにしよう。ケプラー予想は解く事は、ある条件の下に格子体積を最小化する配置を示すことと同じである。ガウスは格子体積が2次関数と関係があることを見出し、ケプラー予想を部分的に解決した。

 

 しかし問題はこれで終わらない。ガウスが解いたのは、球の位置が格子状に存在する場合である。球の位置に制約がない場合に本当にケプラー予想が成り立つか示す必要がある。2次元の場合(これは球の代わりに円を考える)は、とてもスマートな方法で解かれている。空間に存在する頂点、辺、面の数には一定の法則がある。これをオイラーの法則と呼ぶ。2次元においてはオイラーの法則をフル活用して、ケプラー予想を肯定的に解決した。

 

次は3次元だが、解決には難航を極めて。結論を言うと解決には球の配置をあるパターンに還元して、その有限パターンをコンピューターによって解析するという手段が取られた。ヘールズによってケプラー予想が3次元について肯定的に解かれたのは、なんと1997年のことであった。自明のような予想にこんなに時間がかかるとは、ケプラーさえも思ってなかっただろう。

 

 さて、本書には3つの素晴らしい特徴がある。

 

 1つ目は随所に証明あるいは証明に関わる数学的なストーリがきちんと書いてあることである。球の中心を格子状においた場合の2次元、3次元の証明はそのハイライトである。高校数学の知識があれば、この証明は追うことができる。是非見事な証明を堪能して欲しい。もちろん、このような証明を読み飛ばしても本書は楽しめる。

 

 2つ目は幾何学のキーワードを学ぶことができることだ。オイラーの法則はもちろん、ボロノイ図やドロネー図についても詳しい解説がある。ここでは説明を割愛するが、コンピュータを使って空間(例えば地図)を解析するときに、ボロノイ図やドロネー図は必須のテクニックとなる。計算幾何に興味がある人は是非読んで欲しい。

 

 最後はケプラー予想に限らず、最新の幾何学の話題を学べることだ。球に対して最大いくつの球が接することができるか、という「キス問題」は特に興味深い。他にも後半にはケプラー予想に関係のある数多くの予想が解説されている。

 

 残念ながら本書を読んでもレジ袋に品物をうまく入れるようにはならないだろう。なぜなら品物はいつも球とは限らないからだ。友人がグレープフルーツやオレンジを買いに行く時、ケプラー予想を話すのは如何だろうか?

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