オフィスツアー(ビットメディア)を振り返る
10/16(金)にP2Pライブ配信で有名なビットメディアでオフィスツアーを開催しました。参加者数は10名でP2P配信談義で大いに盛り上がりました。
オフィスツアーに関わる周知情報は以下のURLをご覧下さい。
http://toremoro.tea-nifty.com/tomos_hotline/2009/08/post-c2f4.html
以下概要と感想です。
□ビジョン先行の企業
ビットメディアといえば、P2Pライブ配信企業として有名ですが、それだけでなくポイントシステムやスマートグリッドに関わるシステムを開発しています。(スマートグリッドについては現在プロジェクト進行中とのこと。)
ビットメディアのビジョンは「地産地消」「徹底的にニッチ」ということで、ローカルなエリア対象にそこに根付いた小中規模な事業を手がけるところがユニークだと考えました。このビジョンは開発方針(システムの規模やコスト)にも反映され、結果的に
・「ニッチ」なため競合他社が入りにくい
・リーズナブルなシステムなため、小中規模なイベントでも利用できる
・「ニッチ」だがペイできる収益を確保できる
という好循環を生み出しています。ビジョンを通して更にユニークな分野に事業が広がるところを期待しています。
□P2P配信の話
いよいよ今回の目玉であるP2Pライブ配信の話です。P2Pライブ配信はツリー上で行います。つまり、ツリー(いわゆる配信木)に端末が存在し、端末はその下位の端末にコンテンツを渡します。このことで、コンテンツ配信サーバのネットワーク負荷と各種リソースを大幅に削減することができます。
ところで、コンテンツ配信サーバ自体をより動的に利用できるのが、ビットメディアの売りです。コンテンツ配信サーバとしてなんとAmzon EC2を使います。このことによって、本当にライブ配信をしたい前後だけにAmazon EC2を利用することで、配信コストを大幅にコストダウンすることができます。またAmazon EC2を使うことにより、配信をすぐに開始でき、(デモではAmazon EC2の設定を含め数分でコンテンツ配信が可能となりました。)また配信スケールも簡単に変えることができます。
つまり、ビットメディアのP2P配信システムはP2P+Amazon EC2によって
・コンテンツ配信のイニシャル/ランニングコストの低下
・高スケーラビリティなコンテンツ配信
・機動力のあるコンテンツ配信
を実現しているわけです。
Amazon EC2をコンテンツ配信サーバとして利用すると、やはり遅延が発生します。ただし、双方向性のコンテンツではないので、遅延は個人的には気になりませんでした。
最近ではネットワーク高度利用協議会で提案しているヒントサーバを利用して、トラフィックをISP内で閉じ込める工夫もしています。
□より収益のある事業に向けて
NHK合唱コンクールの地域予選をP2Pライブ配信したところ、各種から問い合わせがきたとのことです。中継では数100ぐらいの同時視聴者数があって、安定的に配信できたとのことです。この程度の視聴者数を見込められるライブ配信であれば、ビットメディアの配信システムも候補に入れた方が良いでしょう。
ビットメディアのライブ配信の良さはなんといってもコストパフォーマンスです。1ヶ月1チャネルを利用するときの配信料金はたった10万円です。これはP2PとAmazon EC2を採用しないと実現できない料金体系です。
また配信料金の低価格を活かして、個人によるコンテンツ配信事業の検討をしているとのことです。料金体系は30分100円~で誰でもコンテンツをライブ配信可能な模様です。こうなるとビデオカメラを使って誰もが簡単にライブ配信ができる日がもうすぐやってくるのでしょう。なお個人配信のコンテンツとして、少年スポーツ団や結婚式のライブ配信などを想定しているようです。
□終わりに
今回のツアーはビジョンとマーケティングとの密接な関わり合いについて考えさせられました。ビジョンからマーケティングに落として、それから技術を生み出すというトップダウンの仕組みがビットメディアでは実践されています。その結果、ニッチだけれどもユーザから感謝される新たなサービスが数多く実現しているのです。このオフィスツアーを通して、技術者であってもマーケティングや経営戦略をもっと勉強しなければ消費者に訴えられるサービスは作れない、という気持ちが沸いてきました。
□追記+次回のオフィスツアーは?
今回のオフィスツアーのTwitterハッシュタグは#officetour です。また感想記事はSBMで「オフィスツアー」タグでまとめられています。
次回のオフィスツアーは2010年2月開催予定です。ユニークさ企業としてとても有名なのでお楽しみに。
本Blogではオフィスツアーにご協力頂ける企業、団体の方をお待ちしています。ユニークな企業の方、先進的な企業な方、楽しい雰囲気の企業、地域に貢献している団体等ご連絡をお待ちしております。また今後は大学、大学院の研究室のツアーもやりたいと考えています。
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