秋の夜長に現代音楽ってどうよ?~Vol.1「聞きやすい曲」編
Blogを始める前から「Tomo's Homepage」というWebページを運営している。私の知人の多くはこのWebページをP2Pの解説ページだと思っているが、実は現代音楽入門のコーナーとして立ち上げたのが始まりだ。元祖Webページは大学院院試が終わった直後に作り始めたので、もう10年以上前のことになる。
P2Pもそうなんだけども、現代音楽(というより現代芸術全般かな?)って普通の人にとって物凄い偏見があると思う。でも実際に聞かせると意外に聞ける!とかクラシックより面白いよね、という人が多い。現代音楽に触れる機会は残念ながら少ないので、多くの人が偏見を持っているのが実情なんだろうなあ、と考えている。
話は変わるけども、テクノとかノイズとか好きな人は現代音楽に傾倒する人が多かったりする。というのは、これらのルーツを作った人が最近亡くなったシュトックハウゼンなどの現代音楽家の大家らしい。もっとも私はテクノとかノイズはあまり聞かないので、現代音楽とテクノ、ノイズの関係については詳しくは解説できないけども。(*ちなみにPerfumeは好きだよ!)
ということで、ネタ的にも教養のためにも「買って損はないよ!」という現代音楽を少しずつ紹介したい。本シリーズは以下のように3回に分けて現代音楽を解説する予定だ。
Vol.1 「聞きやすい曲」
Vol.2 「カッコいい曲」
Vol.3 「インパクトありすぎ!の曲」
タイトルどおりに秋の間に解説を終えることができるかビミョーであるが、張り切って解説してみたい。あと、曲を聴く前に「20世紀音楽の世界」で現代音楽の歴史を一通り見ておくと理解しやすいと思う。なお今回紹介する現代音楽とは、大まかには「第二次大戦戦中戦後に作られた曲」を指すこととしたい。
この曲もお勧め!というコメントの方は、はてブコメントでどうぞ。
本編はVol.1 「聞きやすい曲」だ。現代音楽アレルギーの人でも聞ける曲をピックアップしてみた。まずはこれで、現代音楽って結構聴けるね~というのを感じて欲しい。
□カプースチン:「8つの演奏家用エチュード」
→カッコいい!そしてスゴいテクニックの連続
21世紀に入ってから注目されてきたロシアの作曲家。ジャズとクラシックの技法を融合したことで知られ、楽譜を見ると超絶技巧のオンパレードである。カプースチンの楽譜は日本の出版社から何点か出版されている。
彼の曲はジャズのカッコよさと超絶技巧によるシビレにつきると思う。ジャズが好きな人なら買って問題はないだろう。彼の作品集、特に前奏曲集などは、似たり寄ったりした曲が多くなり、一本調子になる場合がある。しかし、「8つの演奏家用エチュード」は個性的で且つ劇的な作品が組み合わさることにより、聞いている人を驚きと興奮の連続に導くだろう。
□ライヒ:ナゴヤマリンバ
→ポップで、時間変化が楽しい音楽
短いフレーズを繰り返し、ゆっくり変化させることによって聴衆に独特な雰囲気を感じ取る、ミニマル音楽。ライヒはミニマル音楽の大家であり、今年は来日公演を行い注目された。フレーズはポップな感じでクラシックや現代音楽を聴いているとは思えないぐらい。TVニュースのBGMなどにも使われている。
彼のフレーズの繰り返しテクニックは、理系の人にとっては刺激的だろう。いつの間にかにフレーズが変容している様は、まるでエッシャーの「だまし絵」を見ているかのようんだ。そして先ほど書いたようにポップなフレーズなので聞いていて「こってり」した感じがしない。ライヒの曲は「じっくり聴く」のと「流し聞き」では大分印象が違うと思う。
ナゴヤマリンバは、日本の団体による委嘱作品。彼の本格的な作品を聞く前の入門編としては丁度良い曲だろう。なお、今回紹介したCDはライヒ・ベストという、ライヒ音楽の入門CDである。ライヒは最初期は「Come out」「It's gonna rain」(いずれもテープ音楽)やピアノ・フェーズ(ピアノ曲)といったかなり挑戦的な曲を書いている。ライヒに慣れたら是非チャレンジして欲しい。
□ピアソラ:「鮫」「ル・グラン・タンゴ」
→大人の雰囲気。BARのBGMで流れている感じ。
ピアソラというと、タンゴ音楽の巨匠。タンゴ音楽にクラシックの技法を取り入れて「前衛タンゴ」という音楽分野を作った。彼の曲を聴いてみるとわかるのだが、節々に「対位法」と呼ばれる音楽の技法(フーガにようにフレーズが駆け合いすること)が使われ、それが単なるタンゴ音楽から脱皮した様子がわかる。
ピアソラの音楽はバイオリニスト「クレーメル」やチェリスト「ヨーヨーマー」の紹介によって世に広く知れ渡るようになった。特に「リベルタンゴ」はCMでも流れたのでおなじみの曲である。
ここでは「リベルタンゴ」の他に是非聴いて欲しい小曲品集を紹介CDとして挙げた。クレーメルの名演奏を楽しんで欲しい。
□吉松 隆:プレイアデス舞曲
→繊細に、そして叙情的に
日本を代表する現代音楽家として幅広い活動をしている吉松氏。彼の90年代以降の音楽の特徴として、わかりやすい音楽を積極的に作曲していることが挙げられる。といっても単にわかりやすい音楽を作曲しているわけではない。
楽譜を実際に見ると、変拍子を積極的に使ったり、あるいはギリシャ旋律法を用いるなど随所に現代音楽技法が使われている。
プレイアデス舞曲はピアノ組曲であり、繊細で叙情的な音楽の世界である。聴けばあわただし日常を忘れて心を潤してくれるだろう。またピアノが弾ける人は楽譜を買って是非演奏にチャレンジして欲しい。(*ちなみに聴いた感じ以上に演奏は難しいです。)
彼は小品だけでなく、交響曲や協奏曲など大規模な作品を残している。プレイアデス組曲を気に入ったら、カッコいい感じの「サイバーバード協奏曲」(サクソフォン協奏曲)か叙情的な「メモフローラ」(ピアノ協奏曲)をどうぞ。
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