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2008.10.19

「学会系研究会」 v.s.「 プライベート勉強会」を超えて

最近色々なBlogで勉強会に関する考察のエントリーが多いようだ。もう忘れてしまったが、その中で学会系研究会の状況について危機感があるんだ、といったような記事があったと思う。事実学会系研究会はプライベートな勉強会に押されている状態である。この事態は学会系研究会に参加し、且つプライベートな勉強会を企画している私にとって非常に興味深い。いったいどうしてそのような状況になったのだろうか、私なりに整理してみた。

その前に学会系研究会の状況をまず俯瞰してみよう。

☆ある学会系研究会の例

□講演日時と周知方法
・学会には複数の研究会が存在する。その研究会のWebページに研究会の開催時期や募集方法が掲載されている。一般に月1回程度で研究会が開催される。研究会の一回あたりの開催期間は2~3日ぐらい。

□開催場所
・地方大学で開催されることが多い。1年に2,3回ぐらいは東京や大阪などの大都市で開催されることもある。

□講演の条件
・学会に入会していることが前提。学会の年会費は1万円程度。学会によっては推薦人が必要。
・別刷りを買う必要がある場合も。数1000円程度掛かる。
・期日までにWord等で原稿執筆する。書き方は論文とほぼ同じ。研究会では6ページ程度が多い。
・当日はプロジェクターを使って講演する。講演時間は20分、うち5分は質疑応答。

□講演の審査
・基本的に審査はなし。どんな内容でも発表できる。(といってもあまりひどい内容だと自分が恥をかくことに。)

□講演の聴衆者数
・開催会場や時期、研究会によってまちまち。数10人程度が多い。
・聴衆者の参加費は無料。
・懇親会があることも。
・アカデミックで「有名な」人がいる場合も。でも参加者は名札とかをつけてないので、誰が誰だがサッパリわからない。何度も行って常連にしておくと後がラク。

□講演原稿が欲しい場合
・予稿集を会場で購入する。2~3千円程度。
・講演原稿がWebで一般に公開されることはほとんどない。数年後にCiNiiに載る場合はある。

これから所謂勉強会と学会系研究会を比較してみよう。

□講演者と参加者の間口の広さ
これは圧倒的に勉強会に軍配。勉強会は講演者、参加者ともに参加条件がない、あるいは低い場合が多い。それに比べて勉強会は学会の人、それもその研究会に参加している人のみを一般的には対象。自然と身内同士の発表会となってしまうことも多い。勉強会の場合、講演者と参加者が自然とバラエティに富む。これも勉強会の良いところ。

□講演者の負担
これも勉強会に軍配。研究会の場合、原稿を数ページ執筆することが必要だが、これが非常に大きな負担となる。論文並みにロジックや文章表現を推敲するので、イメージ以上に稼動がかかる。それに比べて勉強会では講師がパワポを作るだけ。講演しやすいわけです。

□講演テーマのバラエティ
勉強会に軍配。研究会の場合、月別でテーマが決まっているが研究会のミッション自体が非常に大きいので、テーマが大胆に絞ることができない。勉強会は必要に応じてニッチなテーマで開催できる。また勉強会は開催者がたくさんいるので、個性のある勉強会が多い。

□講演計画の立てやすさ
これは学会系研究会が有利。通常半年以上先のスケジュールやテーマが決まっていることが多い。そのため、どの研究会にどのテーマで出すか決めやすい。つまり講演することが一つミッションとなっている人(例えば研究者やマスター、ドクターなど)にとってはとてもありがたいことである。一方勉強会はいつ開催されるかわからない、場合によってはもう開催されないかもしれないというリスク要因がある。

□講演後の対外評価等
これは難しい。どっちもどっちかな。アカデミックなところで発表すると、あとで業績リスト等で言えると言う利点はある。でも最近は私の勉強会で講演した人の多くは自分の業績リストで私の勉強会で講演したことを書いているので、あまり大差なくなっているかもね。
あと、勉強会の場合、プレゼン資料等が即時にWebで公開されるといのは大きい。今時研究内容なんてググッて調べるから下手な論文誌よりも勉強会プレゼン資料の方が注目されることの方が大きい。

でも研究会原稿のように何らかの形で業績を文章化し公表することは重要なことだと思う。他の人が詳細な内容を閲覧することができるし、結果的に書いた人自身にフィードバックできる。講演がリアルタイムなフィードバックなら、文章化+公開は時間差フィードバック。プライベートな勉強会でも同じようなスキームが使えたらなぁ。

☆結論
個人的意見だが、学会系研究会の存在意義は以前よりも大分失っていると思う。それはプライベート勉強会の間口の広さ、機動性により学会系研究会に参加しなくても情報とコネクション、経験を得ることができるからである。

学会系研究会はプライベート勉強会を分析して、講演者、参加者ともに充実できる研究会に努力するべきだと思う。その一つとして、研究会原稿あるいはプレゼン資料はWebで即時公開、あるいは著者のWebページで公開できるようにすることが挙げられるだろう。また特に研究会開催予定はIT勉強会カレンダーにリンクできるようにするなど、プロモーションを強化する必要があると考えている。あとは個人的には参加者には名札をつけて欲しいところ。

一方プライベートな勉強会もより向上できる部分はあると思う。年間スケジュールの立案、テーマの絞込み等により講演者が計画的に発表できるスキームを作るとか、あるいは原稿を発表できる制度を設けるとか。あとはプライベートな勉強会がいっぱいあって、なんだかわからない状況になりつつあるので、勉強会間の内容や方向を関連付けるとか、あるいは合同勉強会を開催するとか。

さて私の勉強会戦略における結論だが、多少アカデミックな講演を毎回入れることにしている。これはなぜかというと、勉強会においてユーザ、開発者、研究者という3プレーヤーが参加できることができるからである。プライベートな勉強会だとユーザ+開発者、研究会だと研究者が専らなため、この3プレイヤー間のリアルな交流がなかなかできなかった。私の勉強会はこの3プレイヤーが交流できるように講演テーマを調整している。

何を言いたかったかというと、学会系研究会に参加している人はプライベートな勉強会に、プライベートな勉強会に参加している人は学会系研究会にもっと参加すべき、ということである。ユーザ、開発者、研究者が十分に交流できてないため、各プレイヤーが持つノウハウを十分活かすことができていない。プライベートな勉強会に参加している人は研究会で基礎・応用研究の現状を触れて欲しい。そして可能であれば自分の技術を文章(研究会原稿)として世の中に残して欲しい。逆に研究会に参加している人は自分の研究がどの程度ユーザや開発にフィードバックできるか肌で感じて欲しい。

そのうちに学会系研究会+プライベートな勉強会のコラボができて、お互いWin-Winの関係ができればなあと思っています。事実、VoIP Conferenceについてはとある学会とコラボで記事を特集してもらっています。私はアカデミックなところに片足突っ込んでいるので、学会と勉強会が色々と協調して、お互いにHappyになればうれしいと思います。開発者の皆さん、もっと学会系研究会や全国大会を活用して欲しいな。















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