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2007年7月の2件の投稿

2007.07.16

[P2P]論文で発表か、それともBlogで発表か?

□はじめに

もともとP2Pに関わったのは所属していた研究所でP2Pをテーマに研究をしなさいと指示されたからである。当時はNapsterやGnutellaがリリースされ、P2Pが過剰なほど注目を集めていた。(業界ではP2P第一次ブームと呼んでいる。)

しばらくするとそのブームは終焉したのだが、その理由としてP2Pに対して研究者が冷静になったことと、P2Pに対する技術的限界がわかってきたことが挙げられる。(もっとも後者はDHTが知られるようになって、一部の壁は突破できるようになったのだが。)ブームが過ぎ去るとほぼ同時に私は別会社でネットワーク関連の設計や開発をするようになる。

研究所にいたころは、もちろん論文を書いて発表をしていたし、また関連特許をとっていた。しかし、それは業務としてである。別会社に異動すれば、論文や特許は業務ではないし、P2Pと業務との関連が薄くなる。とはいえ、個人的にはP2Pの魅力が忘れなれないことと、この魅力をほかの人に伝えたくてWebページやBlogでP2P技術の紹介や新たなP2P技術の提案を行ってきた。これは業務でなく、プライベートである。

現在は第二次P2Pブーム真っ盛りであるが、第一次P2Pブームから生き残った人はほとんどいなく、私のようなページが色々なところでリンクされたり紹介されたりするのは、なんだか不思議な感じがする。またP2Pのおかげで本の出版を予定したりと、逆に業務というよりP2Pで会社での知名度が上がり、色々な人に出会えたり、業務も良い方向に回っている。好きな技術は世間で何と言われようと徹底的に追い求めた方が良い、そんな教訓を学んだような気がする。

□発表する媒体は論文、Blogのどちらが良いか?

会社を異動してから論文を発表する機会はほとんど失われたといっても良い。というのは論文を出すには肩書きが必要なのだが、業務と関連がなければ会社の名前を使うことは難しい。となると結局肩書きなしで発表せざるを得ない。少なくとも肩書きなしで発表する人はかなりレアケースだ。

論文で発表するメリットは、その論文がある程度のレベルに達していることを第三者が認めていることだ。副次的な効果として他者から論文を引用しやすくなるし、自分の業績として堂々と掲載できる。またWebページと違って永続的に引用できることも挙げられるだろう。

ただしデメリットも忘れてはならない。まずはその労力である。一語一語吟味することや、必要があれば特許申請をしなければならない。次にその機会である。発表する機会は随時あるわけではない。全国大会なら年2回だし、海外発表なら、それに見合い且つ相当レベルの機会を見つけなければならない。そして忘れてはならないのは、発表する機会が失われることがあることだ。自分としては満足なのだが、審査員によって論文が却下されることがある。(もちろんこれは論文の一定レベルの確保と表裏一体のわけだが。)

一番大切なのは多くの人が論文を閲覧できるかということである。良い論文があっても多くの人に知られなければ価値は半減以下である。残念ながら日本の論文の多くはGoogle等の検索で引っかからない。

ではBlogでの発表はどうだろう?まず好きなタイミングで好きなトピックを書くことができる。審査などはないので、自分の書いたことが即公表できる。またBlogに書いて発表するということで、自分の発表であることを明確化するとともに、公知の技術にすることができる。ただし、Blogに書いた技術がどの程度のレベルかというものは読者自身が判断することになる。(もっとも論文誌によっては結構いい加減なレベルなものもあるようだが。)

最大の利点は検索エンジンで上位に掲載されることである。あらゆる情報がWeb上に集まっている中、検索エンジンを活用することは重要である。

作成期間という視点も大切である。たとえば論文を発表するには、取り掛かってから発表するまで数ヶ月かかる。一方Blogはアイデアが沸けばその日のうちに公表できる。つまり、論文に投稿する人が3ヶ月前に暖めていたアイデアも、一方ではBlogでその日のうちに発表され、結果的にBlogに書いた人が最初にそのアイデアを発表したということにもなる。このようなケースは増えていくだろう。

個人的にはBlogで一定レベルの記事を投稿すれば、そこそこ書かれている論文よりもBlogの記事の重要性のほうが高くなるのではないかと思っている。

□終わりに
今回このようなテーマを考えたのは、多くの人がレベルの高い論文を書いているのに、なぜ一旦P2Pの世界から「業務としては」離れた人間が書くBlogやWebページの方が注目を浴びているのだろう?とふと疑問に思ったからである。それは情報の入手が人づたいや論文というメディアから検索エンジンにシフトしているからではないかと考えている。

論文の存在意義はまだまだ大きいと思っている。ただし検索エンジン世界の今、すなわちすべての情報がWeb上にあふれている今、その意義は少しずつ薄れているのではないのだろうか?論文誌がさらにオープンになることにより、論文の魅力を高めることができ、投稿者と論文誌双方にメリットがあると考えている。

もし私が論文誌改革をするなら、すべての論文を公表し、Google等で引っ掛けられるようにすることと、自分の出した論文をpdf等で自分のサイトや会 社のサイトで公表できるようにすることだと思っている。ライトなユーザは論文検索エンジンなど使わず、Google検索を使うからである。

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2007.07.02

[Web]研究用Webページに対するアクセス制限の必要性

本BlogやWebサイト(P2Pとは何か~基礎から研究紹介まで)にはアクセス解析ツールを設置している。アクセス解析ツールを使うとアクセス数の時間的推移や検索したキーワード、さらにはリンク元のページがわかり非常に便利である。

本BlogやWebサイトはP2Pに特化していることもあり、P2Pに関連した研究のWebページやWikiなどがリンク元のアクセスも多い。これらリンク元は外部者(つまり私)からアクセスできる事が多く、特に大学やベンチャー企業については、ほとんどアクセス制御をしてないのが実情のようだ。検索サイトに登録されてないようにWebサイトを細工しているからといって油断はできない。(大抵のサイトは、そのような対処しかしてないようだ。)

本来研究用のWebページは研究者間の中でクローズにすべきだ。というのは、研究者にとって重要なのは「新規性があり」「有用である」ネタを発表することだからだ。不用意に他の研究者にネタをもらすと、そのネタを先取りして発表される事もある。私の研究室の先輩もネタを取られたことがあるらしい。研究成果を公開するのは、論文発表した後でも良いはずだ。むしろ、論文発表した後はどんどん成果をWeb上で公開すべきだ。(研究成果の公開戦略については近日考察を書いてみたい。)

研究用サイトが公開されている事は、研究の最新動向がわかるため個人的にはうれしいのだが、やはり研究者としてリスク管理はすべきだと思う。私と同様に研究結果をWeb上で発表したり、まとめている人が悪意を持ってないとは限らないからだ。

Webページのアクセス制限の方法として
・閲覧の際に認証を行う
・組織外部からのアクセスを禁止する
等が挙げられるだろう。アクセス制限をする方法は比較的容易であるので、Web管理者は早めに対策を打つべきだ。検索サイトに登録されないように細工するだけでは不十分だ。

なお、そもそも正規な研究として扱ってない場合や戦略的に技術の公開を早める場合は、私のようにオープンなBlogやWegサイトに研究成果を公開し、公知の技術にしてしまう方法もある。

研究成果として論文の形でオフィシャルに公表するのか、ブログのような媒体で公表するのか、どちらを選択するのかを考察するのは非常に興味い。私も一時期考えた事があったので、近々その戦略について書いてみたい。

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