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2007年4月の3件の投稿

2007.04.22

[P2P]日本で一番使われているP2PサービスはIP電話!?

□はじめに
P2Pというと、一番有名な利用形態としてWinnyのようなファイル共有サービスを思い浮かべる人が多いだろう。ある程度P2Pについて知っている人はSkypeのようなインターネット電話もサービス例として挙げることができる。しかしIP電話がP2Pを使っている事を知る人は、なぜか少数派である。

□IP電話のプロトコル
IP電話で使われているプロトコルは大きく分けて
[1]呼制御
[2]音声・動画データの送受信
の2つに分かれる。呼制御とはなじみのない言葉かもしれないが、電話を掛けたり、あるいは着信を知らせるためのプロトコルだとイメージをつかめばOKだ。呼制御には一般的にSIP、音声・動画データの送受信はRTPというプロトコルが使われる。なおどちらもUDPを使って通信する事が一般的である。なお、Skypeのプロトコル内容は一般に公開されていない。

□音声・動画データはP2P通信
呼制御は通信事業者(キャリア)が集中管理をするため、おなじみのクライアント=サーバモデルを通常使う。呼制御をキャリアが集中管理するメリットとして、課金が可能、付加サービスの提供が容易などが挙げられる。しかし音声・動画データは基本的にP2P通信だ。これはなぜだろうか?

理由は大きく分類すると以下の通りである。
[1]遅延を避ける
音声品質は遅延によって劣化する。例えばテレビの衛星中継は遅延が大きいために、スムーズに会話ができないことがある。そのため、遅延を極力小さくするためにP2P通信を行う。

[2]パケットロスを少なくする
音声品質を劣化する要因として、データの欠落(パケットロス)が挙げられる。基本的にはネットワークの経路が小さいほどパケットロスは少なくなる傾向がある。P2P通信ならネットワークの経路長を抑えることができるので結果的にパケットロスも抑えられる。

[3]キャリアの設備投資コスト削減
仮に音声データをキャリアで一括管理した場合、全ての音声データがキャリアに集まる事になる。音声データ自体はそれほどの大きな帯域が必要ないのだが、仮に数10万通話が同時に成立したら、キャリアはとてつもないデータ量を処理しないといけない。もちろん、データを処理するサーバを収容する拠点は大きな帯域の回線を契約しないといけない。

つまり、音声データはP2Pを使う事で、品質劣化を抑える事ができ且つキャリア側の投資コストを大きく削減することができるのだ。このようにP2Pは生活の中で確実に使われているのだ。

□P2Pの大きな壁、NAT越え
音声データはP2Pを使うのだが、P2Pの厄介な壁としてNAT越えが挙げられる。キャリアがNAT越えを克服するのに使われているのが、以下の2つである。
[1]ブロードバンドルータ自体に電話アダプター機能が装着している
[2]UPnP機能を利用する

[1]を使えば、そもそもNAT越えを考慮する必要がない。なぜならブロードバンドルータ自体が音声データを送受信するからである。[2]はNAT越えを克服するためによく使われる手段である。興味のある方はNAT越えについて拙著のWebページに書いてあるで参考にして欲しい。
P2PとIPアドレスの関係
P2Pとファイアウォール

□IP電話がP2Pを利用している事を知られてないワケは?
ではどうしてIP電話がP2Pを利用している事を多くの人が知らないのだろうか?VoIPを知っている人は音声データ通信がP2Pを使っている事は常識だ。
とりあえず推測を含めて理由を3つ書いてみた。

[1]IP電話はクライアント=サーバモデルも利用しているから
音声データ通信はP2Pだが呼制御はクライアント=サーバモデルを利用している。だからP2Pとして記事として紹介するには、抵抗がある執筆者が多かったのかもしれない。

[2]P2P=悪のような書き方をしないと雑誌や新聞のウケが悪い
P2P=悪のようなイメージが一般に定着してしまった今、P2P=良い事に使われる、と書くと雑誌や新聞の売り上げが上がらないし、あるいは読者のウケが悪いのかもしれない。それよりもP2Pに関するセキュリティの記事を書いた方が一般の人は興味を引くのかもしれない。

[3]P2Pに関する記事の執筆者の多くがIP電話がP2Pを使っていることをリサーチ不足で知らなかった
まさか!?しかしそのまさか、かもしれない。

□最後に
IP電話を提供しているほとんどのキャリアがP2P通信を利用していると考えられる。各キャリアのIP電話ユーザ数を計算すればわかるが、IP電話ユーザ数はファイル共有をしているユーザ数を超えると考えている。さらにSkypeも含めると相当数のユーザが知らず知らずのうちにP2P通信を利用しているのだ。しかしこの事実を知らない人が多いのが残念でならない。
P2P⇒ファイル共有ではなく、P2P⇒IP電話のように、P2Pを好意的に(あるいは客観的に)捉える記事が増える事を願うばかりである。特に新聞記者や雑誌記者の方、お願いします!

□P.S. Twitterはじめました。
興味がある人は是非。ぽつぽつと更新しています。
http://twitter.com/toremoro21







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2007.04.08

ソーシャルブックマーク(SBM)勉強会の準備を開始します

VoIP Conferenceのときもスピーチしましたが、そろそろ念願だったSBM(ソーシャルブックマーク)勉強会の準備を開始したいと思います。イベント名はSBM Conference 2007かな。

□開催日時:2007年度中
□場所:調整中(都内を想定)
□講演内容:調整中
個人的にやりたい内容として
・SBM各社の最新動向・戦略
・SBMのAPIを使った事例
・社内SBM
・アルファクリッパーが語るSBMの使い方(パネルディスカッション?)
・アルファブロガーが語るSBMで気になるところ(パネルディスカッション?)
・SBMシステムの現状(はてな 、livedoor等)
・SBMとべき乗則(ネットワーク関連)
等。。。

興味のある方はMixiのコミュニティでコメント等を頂ければと思います。講師の方も募集中です。

ソーシャルブックマーク勉強会(Mixi)
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1884999

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[P2P]ノード数と最大ホップ数の関係~その1

DHTの研究をしていくと、平均ホップ数や最大ホップ数を気にするようになります。すると、平均ホップ数や最大ホップ数はどこまで改善できるようになるのか、一度は考えて見たかたもいると思います。実は私もその一人です。

そこで、今回はノード数と最大ホップ数の一般的な関係について考えてみましょう。

以下の問題について考えてみてください。答えは近日中に公表します。解答案を作った方は是非トラックバック等をしてくださいね。

□問題
Pure P2Pに参加しているノード群を考えてみる。各ノードは一定の数のリンクを持っている。1ノードあたりのリンク数をPとする。またノードの総数はNとする。ノードがホップできる先はリンクしているノードに限られるとする。このとき、最大ホップ数はN,Pをつかってどのような関係にあるのか示してください。なお、任意の2ノード間はリンクにより辿り着くことができることとする。

P2Pは複雑ネットワークやグラフ理論と深い結びつきがありますが、今回の問題はグラフ理論の応用です。グラフ理論でいうと、リンク数は「次数」、最大ホップ数は「直径」に相当します。任意の2ノード間がリンクを使って辿れる事は連結グラフに相当します。
実を言うと、考えやすいように今回の問題は次数が一定=Pの場合を書いていますが、次数が一定でなくてもノードにおける最大次数がPの場合も答えは同じになります。もちろん、Structured P2PでもUnstructured P2Pでも当てはまる関係式となります。

是非チャレンジしてみてくださいね。

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