[P2P]P2Pインフラ研究会~「Winnyの技術」著者 金子勇氏講演 ~その2
前回はWinny1とWinny2について金子氏の講演を紹介したが、今回はWinnyの将来
ビジョンについて取り上げたい。
前回の記事:
http://toremoro.tea-nifty.com/tomos_hotline/2006/02/p2pp2pwinny_f793.html
金子氏は、Winnyの課題として
[課題1]オープンソース化が可能か?
[課題2]Winny(というかP2P-NW)を管理する事は可能か?
の2点を取り上げた。
まずは課題1からである。
Winnyは金子氏の方針でオープンソース化をすることはしなかった。
ところが、効率性がウリのBittorentや匿名性が特徴であるFreenetはどちらも
オープンソース化している。
Winnyをオープンソース化できないのは訳がある。
というのは、Winnyは効率性を保ちながらも匿名性を「ある程度」担保できる、
いわゆる「効率性」且つ「匿名性」と追求したシステムなのである。
仮に効率性を高めると匿名性は低下するし、匿名性を高めれば逆に効率性を低下
させることになる。
Winnyがオープンソースになれば、ユーザによっては「自分の都合の良い」ノー
ドに仕立てて、システムに悪影響がでることが懸念される。
しかしながら金子氏は、BittorentとFreenetがオープンソース化されて
いる今、いずれは効率性と匿名性が両立するシステムがオープンソース化される
事はあるだろうと述べている。
ただし、講演ではオープンソース化することによって、例えば自分都合の良い
ノードが多くなり、効率性と匿名性のバランスが崩れるのではないか?という問
いに対して明確な答えを出していない。
本当にオープンソースにして、(ほぼ)対立する「効率性」と「匿名性」が両立
するかは個人的にはとても興味がある問題である。一つの解としては、ある部分
だけブラックボックス化して、そこに対してAPIを自由に提供するという事が
考えられる。
次に課題の2番目である「管理性」である。
この管理性についてはPure-P2Pが登場してから何度も問題になってきた。残念な
がら未だに根本的な解決策は現状なさそうだ。
金子氏は講演において、P2P-NWを管理することは可能であると述べた。またそれ
に対するアイデアも「あるらしい」が明確な答えはなかった。
管理性については、色々な考えがあるだろう。
一つは、PGP、あるいはPKI的な手法を電子署名を組み合わせう方法である。
例えば、Winnyのネットワークに対して、管理者があるKeyを流通させる
と、その中にあるコマンドが実行されることが考えられる。なおそのKeyには電
子署名がされており、管理者が発行したKeyのみ各ノードが実行出来る事が考
えられる。
他案として、あるユーザだけ特権を与える事ができるだろう。ただし、ある特権
を与えたユーザの特権を失効させるには難しい。一つの方法として、ある時間内
だけにその特権が行使できる等を使うと面白いだろう。(またはある管理者から
Nホップまで離れたノードまでに管理を与える等)
この特権は階層的になっていて、ソフト製作者は全特権が与えられ、ある特権は
他のユーザに譲渡できる等が考えられる。DHTを使えば、ハッシュ値と特権が
関連付けられ、うまくシステムとして作動するかもしれない。
金子氏の講演は以上である。個人的には、「今ならDHTを使っていたかもしれ
ないが、Winny1のシステムで検索システムとしては充分だと考えてい
る」、との発言が印象的であった。
なお、この後パネラーによる講演が続くのだが、この内容はまた次回に書きます。
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