[著作権]コンテンツ流通の課題点
P2Pの世界を考えてると、どうしてIPでコンテンツ流通がしにくいのか、と言う課題に辿りつく。色々なセミナーに参加したり、本を読んでみたので、著作権やコンテンツホルダーの法的、制度面の点からこれらをまとめてみる。なお、私は法律やコンテンツ業界などは素人なので皆様でフォローして頂くとありがたい。
1)IPでコンテンツを流す時には、公衆送信可権が発生する。これはだれもアクセスしてなくても、アクセスできる環境にあるだけで発生する物である。現在の制度ではこの権利を使うにはコンテンツの著作権者、著作隣接権者から許諾をとることが必要である。
2)たとえばメロディーを配信(例:MIDI)するのであれば、JASRACだけに許諾を得れば良い。しかし、CDを音楽データに変えて配信するとすれば、JASRACだけでなく、歌手のプロダクション、バックミュージックの演奏者、レコード会社の許可が必要である。つまり、CD毎に著作権・著作隣接権の窓口が変わり、それも複数あるために交渉することが非常にややこしく、コストもかかる。著作権・著作隣接権者の一人でも反対すれば配信はNGとなる。
3)そもそも、著作権・著作権隣接権を管理している団体がない場合がある。たとえば、音楽でみるとJASRACで良いのだが、たとえば放送コンテンツを流そうとすると、俳優一人一人にもう一度許諾を得る必要がある。これは非常に大変だ。そもそも放送局側が著作権者のデータベースを持ってない可能性があるし、契約時にきちっとした契約書を書かない場合も多いらしい。これが問題を複雑にしている。政府側でもこのことについては問題意識を持っていて、正式な契約方法についてのガイドライン作成を模索しているようだ。
4)放送の場合はCDなどの音楽の利用は著作権者の許諾なしに使用が可能である。通信の場合はNG。
(PeerCastのようなものでも。)もちろん、放送曲は著作権料を著作権者に払っている。放送と通信の垣根がほとんどなくなっている今、新しい制度が必要かもしれない。コンテンツ伝送においてIPでの通信を回避するために、光ファイバを使うのだが、実際に光ファイバを通っているのは放送「波」であるソリューションがある。放送波で伝送するのであれば、放送の枠組みとなり、著作権者側も問題にしてないようだ。(不正コピーも含めて)
5)業界側はパソコンを使ったコンテンツ配信は不正コピーの懸念があるため、非常に嫌がっている場合が多い。そのため、コンテンツ配信はSTBを使ってテレビに接続させるというシステムの場合、不正コピーの心配がなく著作権者側も納得するようだ。
6)まだ有料課金でコンテンツ配信が充分成功している例がない。ここは難しいところで、不正コピーなど懸念からキラーコンテンツを著作権者側が出してないし、コンテンツ数も多くない。また価格設定も高めだ。そうなるとユーザが来ない、となると配信側も力が入らないという悪循環になっていることが挙げられる。しかし、NHKのコンテンツを2次利用できる動きがでていることから、この辺は少しずつ改善されるのかもしれない。ただ、アニメについては交渉するプロダクションが明確なため、比較的配信しやすいようだ。
7)DRMの有効性については少しずつ認識されているし、コンテンツホルダーも興味を持っているようだ。
ざっとこんな感じである。
まずは質が良く。コンテンツをたくさん揃え、納得いく価格で提供する事。この3点が満たされなければ、コンテンツ配信は成功しない。成功すればコンテンツを通信で入手することは当たり前のことになるだろう。(ユーザは放送でコンテンツを入手するか、通信で入手するかはもはや問題にはならなくなる。)所謂コンテンツインフラの出現である。これビジネスモデルが成功しないとコンテンツホルダーにP2Pでのコンテンツ配信の有効性を理解されるのも難しいのかもしれない。
| 固定リンク
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- iPhoneのスクリーンショットを自動的にメールに投稿するテクニック[IFTTT](2014.11.23)
- WebRTC研究会開催のお知らせ(2014年12月開催予定)(2014.08.24)
- 「Gunosyオフィスツアー」を振り返る〜世界一のニュースアプリを目指すために(2014.06.01)
- Gunosyオフィスツアーの参加者募集を開始しました!(5月9日[金]開催)(2014.04.29)
- 第4回Twitter研究会(5/18[土])の講演スケジュール(2013.05.10)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント