NTT Docomoのコマーシャルで携帯を使ってコンサート会場に入れるCMをご覧になった方も少なくないだろう。既に電子チケットは実用化に動きつつあり、もう数年もすれば電子チケットで入場するの普通の事となるだろう。
まず、電子チケットの特徴を挙げておこう。
1)利用者がチケットセンターまでチケットを取りに行く必要がない。
2)コンサート主催者がどのような属性のユーザが入場したか簡単に把握できる。
3)電子チケットとそのユーザが会場内で購買した物あるいは今後のコンサートチケットを関連づければ、関連グッズなどのマーケティングにも利用できる。(これは私のアイデア。既に実施されているかもしれない。)
4)電子チケットの偽造が困難。(※むしろこれは電子チケットとしての要件を満たすために必ず考慮されている事。)
電子チケットと携帯電話は非常に親和性が高い。その理由として通常市民が外出時に持って行く電子機器において一番割合が高いのが携帯電話だからである。(ついでに2番目はウォークマンなどの携帯音楽機器とのことだ。)
また、携帯電話は通信機能が有るので簡単に電子チケットを入手できる。更にFOMAを代表にして、第三世代携帯には独自の認証番号を有するから、これを用いて個人特定することが可能である。利点としてはそれだけでなく「携帯電話」という閉じた世界で通信のやり取りができるのでクラッキングしにくいということも挙げられるだろう。
電子チケットの実現例として有名なのが携帯電話でバーコードを表示する事である。第三世代携帯となるBluetoothなどの近距離通信機能がついてくるので、バーコードに頼らない電子チケットが出てくるかもしれない。
(というのはバーコードの場合には画素情報なので、うまくするとこれを偽造できるかもしれないからである。)
さて、電子チケットで一つ問題になるのが電子チケットの譲渡である。これがなかなか難しい。
つまり、電子チケットでは偽造を防止するため「その人」以外には電子チケットが流出・複製できないようにしてある。
ということは、Aが電子チケットをBに譲渡するには、次のような要件を満たすことが必要だ。
1)AはBに電子チケットを「確実に渡す」必要がある。改ざんや紛失はないこと。
2)AはBに電子チケットを渡した際には、完全にその電子チケットの権利がなくなる。
3)BはAからもらった電子チケットが「正当である」と評価できること。
4)Bは確かにAから電子チケットをもらった事を確認できること。(これは要件的には弱いかも。)
クライアント=サーバモデルならともかく、P2Pモデルでは難しいところばかりである。特に3)はP2Pモデルでは非常に困難を伴う。
とはいえ、このようなP2P流通はNTTをはじめ、いろいろな人が研究をしているので期待しよう。
おそらく、このようなP2Pの電子チケットの流通は携帯電話で成り立つであろう。といのは先ほど示したように携帯電話は「閉じた世界」なので、不正なアタックがしにくいからである。このアタックがしにくいといのはコンサート主催者からは特に強い要件である。また、このような「閉じた世界」であれば、ソフトで対処できない問題はハードを使って解決できるので、それが携帯電話の使用を後押しできる。
電子チケットの流通はまず、Bluetoothのような近距離無線機能によって実現されるだろう。その後、iアプリや専用のメール機能を使って本格的なP2Pのチケット流通が期待できる。
しかしここでまた難しい問題が出てくる。どのようにして電子チケットの対価を払うかということである。これをきちんと処理にするには、やはり電子マネーの登場が必要だろう。もちろん、電子振込みやWEBのオークションサイトを使う事も考えられるが、これは今のところ一般市民にはやや障壁が高いと言わざるを得ない。その意味でまずBluetoothのような人間による確実な認証が必要である場合がモデル的には(モラル的にも)確実であり、実現も早いだろう。
ただし、携帯電話ではご存知のとおりFelicaを搭載して部分的にだが電子マネーの機能を有するようになる。携帯会社は完全な電子マネーの機能も視野に入れているかもしれない。これに期待しよう。
携帯電話は閉じた世界なので高いセキュリティとモビリティが期待できる。パソコンやPDAなどによる電子チケットの流通は携帯電話で実現した後(それも当分先)のことになるだろう。